基幹教育科のお知らせ

「文学探究」古典×ものづくり作品紹介

授業紹介

1年「文学探究」の授業では人文科学と工学の枠組みを超えた新しい学びの形として「古典×ものづくり」のプロジェクトを実施しています。 学生たちは、夏休みの文献調査を経て、作品の背景にある時代精神や登場人物の心理を徹底的に分析。そこから導き出された独自の「問い」を解決するために、さまざまなものづくりに取り組みました。

知識を暗記する対象としての古典ではなく、自らの手で作り上げることで自分のものとした学生たちの、論理的かつ独創的なアウトプットについて、それぞれの問い、こだわりと、これからものづくりに取り組むかもしれない中学生へのメッセージをご紹介します。

3Dとホログラムで再現!方丈記の世界 

作品の紹介 と「問い」

鴨長明の『方丈記』は、災害や飢饉が続く乱世を生き、山の中の小さな小屋「庵」で本当の幸せを探した随筆です。私たちは、彼の直面した悲惨な自然災害の記録と、その後の庵での静かな暮らしに注目しました。何度も災害を目の当たりにした経験が、執着を捨てた彼の生き方にどう繋がったのか、その関係性を考えました。 
 
「ものづくり」のこだわり

鴨長明が直面した災害のリアルを伝えるため、映像が空間に浮かび上がる簡易ホログラムを製作しました。プラスチック板に別々の映像を反射させ、立体的な空間表現に挑みました。 

また、庵の内部の机や障子、琴や琵琶を3Dプリンターで精密に再現しました。限られた時間で細部まで作り込むため、AIを活用して画像から3Dモデルを作成するなど、高専ならではの最新技術を駆使して彼の暮らした世界を形にしました。 

探究を終えてのメッセージ

古典を「創る」ことで、多角的な見方で当時の人々の心を肌で感じ、新たな発見がたくさんありました。高専では、自分の思いを技術で形にできます。教科書の文字が形になって動き出すワクワクをぜひ体感してください! 

方丈記1
方丈記2

古事記すごろく

作品の紹介 と「問い」

『古事記』の中から、イザナギが黄泉の国へ行く場面、三貴子の誕生、ニニギの天孫降臨、そしてコノハナサクヤヒメとの結婚を選びました。読んでいくうちに、「神様の選択が物語を変えるように私たちの選択も未来を変えるのでは?」という疑問が生まれました。その選択と結果の因果関係を形にしたいと思ったことが、この作品づくりの出発点です。 

「ものづくり」のこだわり

画用紙や色鉛筆を使った工作を選んだのは、手で作ることで物語の世界に入り込みやすいと思ったからです。特にこだわったのは、プレイヤーの選択によって物語が分岐するルートを作ったことです。「この選択をしたら、どんな結果になるのか?」という因果関係を、すごろくの形でわかりやすく表しました。また、黄泉の国から始まり、天界や地上へと舞台が移り変わる流れを、色や形で感じられるように工夫しました。遊びながら古事記の世界を旅できるように作っています。 

探究を終えてのメッセージ

古典を「読む」だけでなく「作る」ことで、神話の世界がぐっと身近に感じられました。みなさんも、好きな場面を自分なりに形にしてみると、新しい発見がきっとあります。 

古事記すごろく

五輪書×Minecraft

作品の紹介 と「問い」
江戸時代初期の剣聖、「宮本武蔵」が書いた兵法書『五輪書』の「水之巻」、「空之巻」を取り上げました。兵法書は技術を扱う方法が記されているだけでいいはずなのに、そこには剣術だけでなく、物事の考え方や生き方にも通じる内容がまとめられていて、「なぜか?」と不思議に思いました。

「ものづくり」のこだわり
武蔵が五輪書を書き記した「霊巌洞」をMinecraftで再現することにこだわりました。現在の霊巌洞をそのまま再現するのではなく「当時はどうだったのだろう」と想像し数々の資料や写真から、ゲーム内のシステムを拡張する「MOD」を用いて、ブロックやアイテムを駆使し洞内の社や門から岩壁、草木の表現まで作りこみました。また、武蔵が執筆・戦闘する様子を撮影し、その映像を背景に原文を読み解釈を発表する動画を完成させることができました。自分たちの得意・好きなものを活かし、遊んだことのあるゲームを使うことでより身近に捉えてもらいたいという意図が功を奏し、見る人に印象を与える面白いものができました!

探究を終えてのメッセージ
古典を「作る」ことで、読んで解釈するだけと比べて作品から深い学びを得ることができました。皆さんも「できること」を活かして疑問や知りたいことを視覚化してみると新たな気づきが生まれてくると思います!

霊巌洞1
霊巌洞2
霊巌洞3

土佐日記が分かる貯金箱を作ろう!

作品の紹介 と「問い」

『土佐日記』とは紀貫之が土佐から京を目指した旅を同伴していた女性目線で書いた仮名日記です。私達は『土佐日記』の船がなかなか進まずに京への到着を待ちわびる場面を選び「なぜ55日間も諦めることなく京を目指せたのか?」という疑問を持ちました。

「ものづくり」のこだわり

私達は工作でものづくりをしました。なぜなら小学生や中学生の頃に趣味などでよく工作をしていてやりやすかったからです。今回、貯金箱をつくるにあたって工夫したことは2つあります。1つ目は見た目を綺麗に見せることです。工作は雑になりがちなのでのりで材料を貼る作業などはていねいにしました。2つ目は仕組みをしっかり作動させることです。お金を入れると船が動く貯金箱ということで船が動かないことには何も始まりません。ですのでよく機構を考えて船が丁度いい距離を進むように調整しました。

探究を終えてのメッセージ

古典の作品は今の作品と比べて読みにくく、理解もしにくいですが古典を「作る」ことで作品の状況や場所がわかりやすくなります。そして自分たちで考えたオリジナルの要素を加えることでさらに古典の幅が広がると思うのですぜひ皆さんにも経験してもらいたいです。

枕草子でカラーペン・LINEスタンプ

作品の紹介 と「問い」

『枕草子』第一段を選び、「春はあけぼの」に始まる四季それぞれの美しさに着目しました。春夏秋冬の情景をもとにLINEスタンプと季節にちなんだ色のペンを制作しました。なぜ清少納言は、四季の中で特に美しい瞬間をはっきりと示したのか、という問いを立てました。

「ものづくり」のこだわり

私たちは、枕草子に描かれている色鮮やかな表現を実際の色として再現したいと考え、オリジナルのペンを制作しました。また、LINEスタンプは、美しさを日常の中で自然に感じられるよう工夫し、『枕草子』をより身近に親しんでもらうことを目的としました。ペン作りではインクの色調整に特に苦労し、理想の色に近づけるため何度も試作を重ねました。LINEスタンプでは、使いやすい言葉や見やすい構図、色合い、線の太さを意識して制作しました。

探究を終えてのメッセージ

枕草子をテーマにLINEスタンプとペンを作るのは、とても楽しくて新鮮な体験でした。古典の言葉や情景を自分のイメージで形にすることで、文章の美しさや面白さを改めて感じられました。作る過程で工夫する楽しさや表現の自由さも味わえ、昔の人々の感性と現代の表現がつながる瞬間を味わう事が出来ました。

能面に宿る魂

作品の紹介 と「問い」
私たちは『源氏物語』の「車争い」の場面を選びました。六条御息所は葵の上との出来事をきっかけに強い恨みを持ち、生きたまま怨霊になってしまいます。その悔しさや嫉妬が、そこまで強い気持ちになってしまったのか。私たちは六条御息所の能面に加え、現代のアニメや祭りなどの文化に受け継がれている天狗やひょっとこの能面も制作し、能面の表情に表れる感情について考えました。

「ものづくり」のこだわり

私たちは、紙粘土を使用してお面作りに取り組みました。3Dプリンタを使用することも検討しましたが、最も大切にしたい人物の感情を表すためには手作業のほうがいいと考えたからです。鬼となった六条御息所をあらわす面では、きれいな顔の中に怖さや不安が感じられるように、頬や目のまわりの彫りを深くしました。また生霊の面では、感情をあまり表に出さない人物の特徴を考え、落ち着いた表情になるようにし、古風になるように黄ばんだ白色を用いました。天狗の面では眉や鼻を太くして力強さや威圧感を出し、スプレー缶での塗装で先に黒を塗ることで赤に深みを持たせる工夫をするなど色・質感にこだわりました。ひょっとこの面では特徴的な口や頬を丁寧に作りました。このように、それぞれの能面の特徴を考えながら作ることで、人物の性格や気持ちを表現しました。これらを実際に作ってみると、少しの形の違いで印象が大きく変わることがわかりました。

探究を終えてのメッセージ

もともと古典はあまり得意ではありませんでした。しかし、高専で自ら「ものづくり」に取り組み、一つの作品について深く探究するうちに、古典に対するイメージが大きく変わりました。自分の手で形にするプロセスを通して古典に触れると、当時の人々の考え方や文化を、驚くほど身近に、そして楽しく感じることができたからです。

制作に夢中になりすぎて、発表の際など上手くいかない部分もありました。けれど、それ以上に仲間と議論を重ね、工夫を凝らして全力で取り組めた時間は、何物にも代えがたい経験となりました。

完璧な成果を出すことも大切ですが、高専という場所は、それ以上に「本気で挑戦する姿勢」を評価してくれる場所です。これから高専を目指す中学生の皆さんに伝えたいのは、器用にこなせるかどうかよりも、まずは「全力でやってみる」こと。その気持ちが超大切です。