新年明けましておめでとうございます。
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大から、既に3年が経過しようとしています。未だ終息する兆しが見えない中、学生の皆さん、そして教職員の皆さんと共に、基本的な感染対策を行い、この困難を共に乗り越え、新年を迎えることができましたこと、先ずは一緒にお祝いしたいと思います。
昨年、本校は学校創立60周年を迎え、11月には60周年記念式典・記念講演会を挙行しました。学校の60年に及ぶ歴史の中でも、新型コロナウイルスによる教育活動の変化や工夫というのは、特筆すべき大きな出来事であったと思います。
学生の皆さんは、オンライン授業のために、対面授業とは異なる不自由な部分もあったと思います。教職員の皆さんにおいては、そうした授業準備のために、多くの苦労があったと思います。その一方で、学生と教員が自宅等から移動せずに、通常の授業と同様に授業が行えるという新たな教育を実践し、その方法を習得したことも事実です。私たちは、このような経験を大切にし、まだ終息に至っていないこの感染症に対して、気を緩めることなく、対応していかなければなりません。
さて、昨年60周年を迎えた本校は、人間で言えば還暦を迎えたことになります。次の10年、またはその先の100周年に向けて、新たなスタートを切ったと言っても良いでしょう。そこで、その新たなスタートとなる年頭に当たり、これからの佐世保高専の未来に向かっての希望と抱負について、皆さんと共有したいと思います。
高専(KOSEN)は、15歳人口の約1%の生徒を受け入れる学校種ですが、この日本独自の教育システムが、現在、世界的に注目されています。これは、全国の高専卒業生が、国内だけでなく海外でも活躍し、世界で評価されてきたからであります。佐世保高専は、その注目されている高専の中でも、今、特に期待をされている高専と言っても良いでしょう。いくつかその例を挙げたいと思います。
先ず一つは、昨年4月からスタートした「半導体人材育成事業」です。全国の高専に先駆けた取組は、昨年の5月に高専機構と熊本高専と共同で行った記者会見を皮切りに、本当に多くのメディアで取り上げられ、今なお産業界や地域社会から注目を集めています。
二つ目に、学生の皆さんがこれまで取り組んできた「サイバーセキュリティーのボランティア活動」が社会的な評価を受け、昨年11月に内閣府特命担当大臣から表彰を受けたことが挙げられます。これは、長崎県警察本部のご指導の下、学生たちが、地域の児童・生徒の皆さんにネット社会を安全に生きるための助言や支援を行ってきた、地道な活動が評価されたものです。
三つ目に、デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業デジタルトランスフォーメーション(いわゆる産業DXです)を牽引する、「高度専門人材育成のための補助事業」に採択されたことです。現在、本校で提案した、高専生と地域企業との共生・共有によるものづくり、DX人材育成に取り組んでいるところです。
この他にも、学生の皆さんの活躍が、多くのメディアで取り上げられました。このような本校における活動の一つ一つが、より良い教育を行っている学校として社会で認知され、ひいては、少子化の中にあっても受験生が増加していく学校となり、更に教育の活性化に繋がり、教育・研究力のある学校として飛躍していくものと信じています。
昨年末、政府は、高専全体に対して、約60億円もの補正予算を措置しました。本校では、このような予算を有効に活用し、社会の期待に応えるべく、これまでのEDGEキャリアセンターの取組をさらに進化させ、スタートアップ人材育成のための新たな教育システムと環境を整備していきたいと考えています。このことについては、プロジェクトチームを結成して対応に当たって頂いております。
また、情報化に対応し得る人材育成が急務であることから、高度情報専門人材育成のための機能強化にも取り組んでいきたいと考えております。これは、これまでの学科の特徴を生かしつつ、新たなコース設置や拡充を検討するものです。これについても、早速、プロジェクトチームを編成し、次代を見据えた人材育成のための教育体制を検討しているところです。
新しい年は、このように、社会の大きな期待の中で、かつ、避けて通れない改革の大波の中でスタートすることとなります。掲げた目標に向かって着実に取り組み、成果を出していくためには、各学科の教員の力が必要で、加えて、事務職員・技術職員等の全てのスタッフの力を結集させなくてはなりません。皆で知恵を絞り、工夫を重ね、高専界のフロントランナーを目指して、力を合わせて参りたいと存じます。
このことを申し上げ、令和5年(2023年)の年頭の挨拶といたします。
令和5年1月1日
佐世保工業高等専門学校 校長 中 島 寛