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第1回CoTech古典×ものづくりコンテストを本校で開催しました

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2025年12月14日(日)本校(佐世保工業高等専門学校)を主会場として「第1回 CoTech 古典×ものづくりコンテスト」が開催されました。全国5高専の学生が集う中、本校学生も日頃の探究活動の成果をプレゼンテーションしました。

技術で古典の世界を「可視化」する新しい試み

本コンテストは、「高専古典教育研究会」が主催し、本校EDGEキャリアセンターが共催として運営協力を行ったものです 。 「古典×ものづくり」とは、日本の古典作品の学習や調査を基に、科学技術を使用してその世界観を可視化・表現する活動です 。

記念すべき第1回大会には、鶴岡、豊田、舞鶴、鈴鹿、そして佐世保の計5つの高専が参加し、ハイブリッド形式で実施されました 。本校からは、1年生の「文学探究」および3年生の「グローカルリテラシー」の授業成果としてエントリーしたチームが出場し、「九州産業大学学生賞」や「社会実装賞」を受賞するなど、それぞれの工夫が光る発表を行いました。

学生の声:制作を通して見えた「リアルな古典」

授業での学びを越えて、放課後や休日も使いながら試行錯誤を重ねた学生たちの振り返りを紹介します。

■ 九州産業大学学生賞

チーム名:青葉 作品名:「源平合戦ボード」

平家物語の複雑な戦況をボードゲーム化した本チームは、制作過程での「気づき」について以下のように語っています。

「コンテストに参加するまで、私たちにとって古典とは、昔に何が起こったかをただ伝えるための文学作品だと考えていました。しかし、古典文学では事象を全て文章で表すため、現代人にとってその状況のイメージを持つことは難しいものでした。このコンテストを通して、その時代に何が起こっていたのかを古典文学作品からものづくりを通して視覚化することで、この難しいイメージを簡単に持つことができることを他グループの発表から感じました。 今までに私たちが参加した他のコンテストでの反省を活かし、二か月前から少しずつ準備を進めました。特に直前期は毎日放課後2~3時間、休みの日は一日中準備を進めることもありました。そして、他の人たちのサポートもあり、九州産業大学学生賞を受賞することができました。この賞は我々の準備だけでなく、制作の手伝いやアドバイスをしてくださった先生方のおかげもあり、大変感謝しています。今後も深めるほど面白い古典の世界について学んでいきたいです」

■ 社会実装賞

チーム名:小坪の舞 作品名:「伝統を、目の前に。鷹狩×VR」

かつて権威の象徴であった「鷹狩」をVR(仮想現実)で再現した本作。実際に鷹匠のもとを訪れるなど、徹底したフィールドワークと技術実装を行いました。

「今回のコンテストを終えて、一番大きな収穫は、古典というものが単なる『昔の文章』ではなく、当時の人々のリアルな日常や感情が詰まったものだと実感できたことです。 プロジェクトを通して調べていくうちに、鷹狩が当時の貴族にとって権威の象徴であり、欠かせない教養であったことを知り、実感がなかった文字情報が具体的なイメージへと変わっていきました。

制作プロセスでは、夏休みに実際に鷹匠の石橋美里さんのもとを訪ね、360度カメラを頭上に固定して『渡り』という動作を撮影させていただきました。しかし、実際の準備は決して平坦ではありませんでした。デリケートな鷹の生態に合わせた早朝から撮影、After Effectsなどの慣れない編集ソフトの攻略には非常に苦労しました。それでも、この動画をMeta Questで視聴できるようにすることで、本物の鷹が自分に向かって飛んでくる迫力や、鷹匠だけが感じている視点を再現することに注力しました。

この過程では、情報知能工学科 手島教授から360度カメラやMeta Questの具体的な操作、文化祭での展示方法について細かく教わりました。また、基幹教育科 大坪准教授からは古典と鷹狩を繋ぐ視点を教えていただき、スライド構成の基礎を教えていただきました。他にも色々な方々のサポートがあったからこそ、VR体験として形にすることができたのだと思います。文化祭での体験会では、小学生から50代まで幅広い層の方々に体験していただき、8割以上の方から『理解が深まった』との回答をいただけたことが嬉しかったです。

コンテスト当日は、他のチームの発表にも圧倒されました。酒呑童子の刀を木材と塗装で本物そっくりに再現していたり、源平合戦をカードゲームに落とし込んでいたりと、自分たちとは全く違う『ものづくり』のアプローチで古典を表現しているのを見て、一つの正解に縛られない自由な発想の大切さを痛感しました。 今後は、今回のVR体験をさらに進化させたいと考えています。現在は実写映像がメインですが、今後は鷹の動きを3Dモデル化して、より自由な視点で観察できるようにしたり、体験者が自ら鷹を操っているような感覚を味わえるコンテンツ作りを目指します。これからも、ものづくりと古典を組み合わせることで、伝統文化を次の世代に伝えていきたいと思います」

文理融合による「技術者版デザイン思考」の育成

本校では、1年生の「文学探究」で全学生がこの「古典×ものづくり」に取り組んでいます。 一見、工学とは遠い存在に思える「古典」ですが、これを「技術者版デザイン思考の実践」と位置づけ、文系(古典)と理系(工学)の垣根を越えた「分野横断型」の人材育成を推進しています。 学生たちは「古典の世界観」という制約の中でいかに技術を使って表現するかを考えるプロセスを通じ、社会の要求を仕様に落とし込むエンジニアとしての基礎力を養っています。

司会を担当する九州産業大学森ゼミナールの学生
チーム「小坪の舞」
チーム「青葉」
他高専との座談会
表彰式
受賞の感想