新年あけましておめでとうございます。
2025年の年頭にあたり,ご挨拶を申し上げます。
【2024年の振り返り】
昨年は,新年早々の能登半島地震や航空機事故から始まり,世界各地での紛争,大谷選手をはじめとするスポーツ界のさまざまな快挙と活躍,また,地元長崎として忘れてはならない日本被団協のノーベル平和賞受賞など,大きなニュースが飛び交いました。また,コロナ禍からの急速な再生・復興が進む中で,物価の高騰や社会的歪みの拡大など非常に気になる社会的課題も続いています。
さて,佐世保高専はどうだったか。昨年も,技術や発想を通して社会の着実な発展や幸せな社会づくりに貢献できる人財の育成を,教職員が一団となってかつ地域や産業界の皆様のお力を借りながら進めることができました。就職・進学先からの学生への高い評価,コンテスト等での学生の活躍はその成果の一端であると考えています。2024年もそれまでと同様に高いレベルでの高専教育を着実に進めて来られたと学生を見て実感しているところです。
一方で,高専も時代にあった形での教育が求められています。知識と技術と経験をバランスよく学べる高専教育の特徴を活かしかつ発展させながら,時代が求める最先端の教育機関でありたいと考えています。日本の教育は高専がリードする佐世保高専がリードする,その意気込みのもと新たな人財育成にチャレンジをしてきた一年でもありました。

【高度情報人財育成,DX・GX人財育成,起業家マインドの醸成】
AIなどの急速な進展により社会変革の波が押し寄せています。産業革命に匹敵するのではとの声も上がるほどで,今年もさらに大波になることが想定されます。佐世保高専はこれまでも半導体人財育成,水素エネルギー(グリーンエネルギー)活用人財育成,アントレプレナーシップ(起業家マインド)教育など,全国の高専の先駆けとして,社会と時代の要請に応えた新しい技術者教育を積極的に推進し,これからの社会を牽引する技術者の育成を進めてまいりました。
その一つとして,これからの高度情報化社会を担う人財の不足に応えるために,本校は令和5年度に文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」に申請し採択され,高度情報人財育成に向けた準備を進めてきました。いよいよこの4月に新たに再編した4学科に新入生を迎えることとなります。4学科全体で定員を20名増やし,情報系学科での特別で高度な情報教育に加え,残り3学科でも各専門を基盤としつつ情報分野の高い知識・技術を持った人財を育成することを目指し準備を整えています。
また,半導体人財育成や水素エネルギー活用分野では全国高専の拠点として,いままさに必要とされている高度な知識と技術を持った人財を産業界等と連携しながら育成しています。さらに,本校EDGEキャリアセンターを中心としたアントレプレナーシップ教育は新たな発想と技術で地元長崎を元気にすることを一つの目標として「モノづくり」も「コトづくり」もできる学生の育成に力を入れています。これらの教育活動は佐世保高専の重要な柱と位置づけして今年も積極的に展開していきます。
このように,佐世保高専は今年も継続的にこれらの歩みを発展させるべく活動してまいります。全国で最初に設立された一期校の高専であり歴史と伝統ある高専であることに加え,社会の最先端の技術者を育成する教育機関,チャレンジする教育機関であり続けたいと佐世保高専は考えています。
【これからの高専の在り方の継続的議論】
高専教育は国内外から高い評価をいただいています。しかしながら,その評価に甘えることなく,高専教育の良さは何か,これからの最先端の教育機関としてどうあるべきかについては積極的な議論が必要だと考えています。大学と同じ高等教育機関ではありますが,高専には高専の役割があり高専だからできることがあります。特に社会と密接な関係にある教育機関であり,社会と連携した教育実践が特に重要であることは間違いありません。社会変革や新たな価値創造のための人財を高専教育の特色を活かしながらどのように育成していくのか,これは高専教育そのものの再構築・高度化に他なりません。そのための議論と実践を積み重ねていかなければならないと改めて考えているところです。
【おわりに】
今年は巳年(みどし),乙巳(きのと・み)です。乙は植物の成長を意味する言葉とのことです。また,へびは「再生」「復活」「長寿」を象徴し縁起がいい生き物とも言われます。
過去を見ると,60年前の1965年は国産旅客機YS-11就航,朝永博士のノーベル物理学賞受賞,ホンダがF1で初勝利といった技術立国日本が世界に向けて国の成長を強烈に示した年と言えるでしょう。また36年前の1989年は昭和から平成に変わった年で,一つの時代が終わり次に向かって歩み始めた年です。
さて今年はどのような一年となるのか。日本社会の新たな成長と豊かな社会への再生・復活を印象付ける年,大きな転換点となることを期待しているところです。そして佐世保高専は,その社会を支え社会を良くする創造的かつ実践的な技術者の育成に向けて,高等教育機関としてなすべきことをしっかりと実践し継続していきたいと考えております。皆様の変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。
最後になりますが,佐世保高専の学生・教職員の皆さん及び支えていただいているご家族の皆様,さらに日頃より佐世保高専を応援していただいている地域の皆様,企業の皆様など関係していただいている大勢の皆様のご健康を祈念して、年頭の挨拶とさせて頂きます。
今年も力を合わせ,未来を拓く一年としていきましょう。
令和7年1月1日
佐世保工業高等専門学校 校長 下田貞幸