専攻科 Advanced Engineering Course

実践力と創造性を兼ね具えた人材へ

学科案内

科学技術の高度化とシステム化が急速な勢いで進み、産業界では「付加価値の高い新規分野の創成」と研究開発を中心にした「知識集約型産業への転換」が課題となっている。このため、より高度な技術教育を受け、研究開発に優れた能力を発揮する実践力と創造性を兼ね具えた高度専門職業人・実践的技術者の育成が望まれている。
本専攻科では、このような産業界の要請を踏まえて、本科の教育で修得してきた実践的技術の上に、さらに2ケ年の教育課程での目的を次のように掲げている。

  1. 工学の基礎および専門分野に関する知識を教授し、創造性豊かな応用力を養成する。
  2. 地球的視点でものごとを考える素養および能力と、科学技術が自然や社会に及ぼす影響を理解できる人間としての倫理観を養成する。
  3. 日本語による技術的な内容の説明・討論ができる能力と国際社会を意識した英語によるコミュニケーション基礎能力を養成する。
  4. 他の専門技術分野に関する基礎知識と最新の知識を教授し、複合化・高度化した工学分野について複眼的な課題探求能力と問題解決能力を養成する。
  5. 自主的・継続的に学習でき、協調して行動できる能力を養成する。

一般科目・専門基礎共通科目

高度科学技術の中核を担う専門職業人としての教養と専門基礎知識を有する技術者の養成を以下の内容で行う。

  1.  数学(数理科学)や、一般化学などの一般科目、および現代物理などの専門基礎科目を修得し、高度専門職業人としての基礎能力を養う。
  2.  日本語表現表、総合英語、応用コミュニケーションの語学教育により、国際的に通用するコミュニケーション能力を養い、技術と哲学、環境論、国際関係論などの科目を修得し、地球的視野で技術と社会の共生を追求しグローバルな視点をもつ技術者を育成する。
  3. 技術者総合ゼミ、総合創造実験、総合創造演習などの複合科目では、4つの系の専門分野をコラボレートし、システム創成能力と複眼的な問題解決能力を養う。

複合工学専攻

各専門分野(工学系)で育成する技術者像

  1. 機械工学系
    • あらゆる産業の根幹をなす機械工学では独創的研究開発を展開するための基礎科学である場の力学、粘性流体力学、熱流動工学、機械振動論などの力学関連の専門科目を中心に、機械要素の設計・製作・制御に関連した精密加工特論、工業計測学、メカトロニクス工学を修得する。さらに、情報、バイオ、環境などの分野横断的な科目も修得することにより、先進的でシステムデザイン能力を有する技術者を養成する。
  2. 電気電子工学系
    • エレクトロニクス・コンピュータ技術の基礎となる数理科学系科目を中心に、材料科学や生産システム工学など幅広い分野・領域の科目を修得し、産業界での設計・生産や研究開発分野の先進的技術者として、多面的、かつ総合的に寄与できる基礎能力を涵養する。さらに、特別研究などを通じて、新規分野の開拓能力、高い問題解決能力を培い、システム創成能力を有する実践的技術者を養成する。
  3. 情報工学系
    • コンピュータおよびネットワークなどの情報技術系およびものづくりの基盤となる電子制御系の専門科目を中心に、環境、バイオなどの学際的な科目を修得し、複眼的な視点を身に付ける。さらに特別研究などにより、情報技術と電子制御の融合技術、創成技術を修得する。これらの習得を通して、情報技術に関する高度な専門知識を、電子制御技術へ融合的に応用し、人にやさしい知的情報処理システムを創成できる研究開発型技術者を育成する。
  4. 化学・生物工学系
    • 付加価値の高い素材・製品の研究開発と生産技術を中心とする化学工業の分野と、医薬品等の製造で実用化が図られている先端的バイオ技術分野にわたって幅広い高度な専門知識を修得する。さらに、特別研究などを通じて、環境・エネルギー問題への化学・生物学的見地から対処できる能力を養い、各種分析技術や材料開発を含めた関連の技術分野における開発・研究に従事できる創造的技術者を養成する。

産業数理技術者育成プログラム
Program for fostering engineers specializing in industrial math

プログラム設置の背景

高度に発達し、さらにイノベーションを繰り返している工学技術において、数学的あるいは数理的に扱う課題はますます増大しています。例えば、その重要性は、以下のような分野で挙げられます。

  1. 自動車、造船、航空機などの製造分野ではその設計に関して、様々な数値シミュレーションの積み重ねは不可欠ですが、そのもとになっているものは、すべて現象の数学モデルです。しかしながら、実際には多くの技術現場では、数学的知識の不足のためにその原理を理解することができず、主として海外のソフトウェアメーカーのパッケージに頼らざるを得ない現状にあります。そのことはまたパッケージ自体の効果的な活用上でも大きな障害となっていると予想していますし、実際に、このような声を、ものづくり現場からは伺う機会が多数ありました。
  2. 最近の3次元の切削加工では、複雑な空間認識が必要であり、その基礎技術では微分幾何学的な思考力が要求されます。
  3. LSI 設計では、最適化理論や組み合わせ論は重要な役割を果たしています。
  4. 金融工学やリスクマネジメントでは、確率統計的考察が必要であり、最近のビッグデータ処理においてもしかりです。

このように、ものづくり産業技術においては、自然・社会現象の数学モデルを組み立て、それを数理的・数値的に処理する手法が極めて大きな役割を果たしており、通常の工学技術に加えて、数学的理論を使いこなす力が、強く求められています。しかしながら、そのような要求条件を満たす数学的能力は、現状の大学の工学部や高専専攻科修了生では不十分であると考えております。

佐世保高専の取り組み

このようなことから、佐世保高専 専攻科では、数学と工学との相互の関連性を総合的に理解し、それらの専門知識の融合を図り、産業界に貢献できる産業数理技術者の育成を目標とした具体的な教育内容として、

  1. 従来から教育してきた専門工学分野(機械、電気電子、情報、応用化学)を修得させる。
  2. さらに、産業数理分野で必要とされる産業数理系(数学系)科目を修得させる。

これにより、『専門工学分野』 と 『産業数理分野』 の2本の基軸を有する専攻科修了生を育成します。
なお、産業数理技術者育成に関しては、2015 年10月に九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)と包括的連携協定を締結しました。今後は、その知見を共有し、教育・研究を推進して行きます。

「産業数理技術者育成プログラム」の修了認定に必要な科目群(必修科目を除く)

科目名単位数備  考
位相数学集合の初歩を含む
代数学概論代数学の初歩、群・環・体
離散数学グラフ理論
特別研究産業数理に関する工学分野をテーマに取り組む

修了生の進路 (令和3年3月31日現在)

【進学先】 奈良先端科学技術大学院大学、九州大学大学院、九州工業大学大学院
【就職先】 株式会社SUBARU

総合創造演習

専門分野の違うメンバーで構成されたグループに分かれ,課題テーマに対応した自律型ロボットをマイコンをシステムの中心において構想・設計・部品手配・コスト計算・製作・発表までを行う。

課題テーマ

カリキュラム

専1年 固体力学、生命科学、情報基礎論、解析学Ⅰ、解析学Ⅱ、場の力学、粘性流体力学、精密加工特論、機械振動論、画像情報工学、通信方式、電気エネルギー応用、触媒プロセス工学、工業分析化学、酵素工学、製造システム論、ソフトウェア科学概論、電気回路特論、高分子工学、電気通信概論、現代制御論、移動現象論
専2年 特別研究、科学英語文献ゼミ、熱流動工学、情報科学、知識情報工学、有機化学特論、無機工業化学、植物学特論、流れ学、破壊強度論、数値力学解析法、工業計測学、メカトロニクス工学、材料科学、放電工学、電磁気学特論、生産システム工学、構造生物化学、応用物理化学、インターンシップ